つれづれなるままに・・・meteorologist, announcer, narrator, writer : miura mayumi Officical blog.

雅楽

February 02, 2019

日脚伸ぶ


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どこまでも

透明に

すっきり

洗われた

空と気の下で...

どこまでも

高く

澄み渡る

旋律

浴びて

浄められる

心と氣...

寒晴に

陽射しの温もり

一滴

届いて

節替わり

カウントダウンする日。







*日脚伸ぶ:年も明けて、少しずつ日が長くなること。冬木の芽もしだいにふくらみ、
      春が近いことを感じる。冬の季語。






☆つぶやき...
 日本の伝統芸能の一つの雅楽を堪能する機会を頂戴しました。
 笙,篳篥、琵琶などの器楽合奏のみの管弦、そして、舞を伴った雅楽。
 精神の鎮静、眠りを誘う音楽と舞いうイメージでしたが、
 間近で聴くことができたおかげで、独特な旋律の緩やかさにこもる意外な音の力強さと
 同様にゆるくしなやかに見える舞に宿る剛さに、心の波は静まりつつも
 目を閉じながらもじっくり聞き入り、麗しい舞と衣装に見入る時間となりました。
 脈々と歴史を受け継ぎながら、現在進行形で深まっている正統な芸に触れる...
 平成最後の冬季、古きにじっくり触れて目に新しき世界がすんなり開いたような日にて。





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mak5 at 21:06|PermalinkComments(0)

触れる... 雅楽


毎朝、神社にお参りしていた頃、ときどき遭遇していた朝の神事。

巫女の舞と雅楽が心にも染み込んだ、おごそかな気持ちで始まる一日が好きでした。


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本格的な鑑賞は初めての雅楽。

通りすがりでしかご縁のなかったこの日本の伝統芸能の一つを

じっくり堪能する時間は、

古きを訪ね、新しい心と目の扉を開くものでした。



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心の深いところにもアクセスするようなゆるい旋律と空気の流れに従うような緩やかな舞。

鑑賞中はきっと眠ってしまうに違いない、

そんな先入観と初体験だからの緊張感をもって席に着くうちに、まずはトークで幕が上がります。



雅楽初心者にも理解し易い楽長による解説は、

クラシックコンサートでもおなじみのトークを挟んだスタイルです。

ソフトで軽妙洒脱な語りゆえに

緊張感はよりほぐれ、知識を得られた安心感とともに鑑賞へとすんなり導かれます。



演奏の変化や衣装、舞の様式が表現するそれぞれの意味合い

...いずれもきょうの演目のための説明なのですが、咀嚼しながら聞いているうちに、

雅楽が受け継がれ育まれてきた歴史の長さとこの表現の深さに思いが至ります。

この未知なる伝統芸能に、こころの中で深く敬意を表しながら。






世界最古のオーケーストラとも称される雅楽は、

中国や朝鮮半島などアジア大陸の諸国からもたらされた音楽や舞に、

上代以前から伝わる音楽や舞が融合されて日本化した芸術です。

日本の雅楽の元は奈良時代まで遡り、概ねの形式を10世紀頃に整えられて以来

現在にも伝承されている....とのこと。



東京楽所(がくそ)の皆さんによる「奉祝の雅楽」と題した定期公演は、

管弦(楽器演奏のみの雅楽)と舞楽(舞いを伴う雅楽)の二部構成。



舞台がはじまると、トークの時間とは一転、厳かさな時空に変わります。

穏やかな高音と緩やかな旋律、そして舞の動きにはやはりまどろみさえ覚えましたが、

予想に反して眠ることはありません。



まぶたを閉じながら聴く音は強く柔らかに右脳、そして、細胞に染み渡り、

重厚、かつ、和と東洋混合の彩りの重ね衣を纏う呼吸するような舞に

からだのこわばりが解きほぐされるよう。

華やかさを伴う美は、高揚と鎮静という両極に触れがちな心を中和させ癒しの力を持つのか...

そんな体感が内奥に生まれます。




「奉祝の雅楽」のタイトルの通り、演奏と舞には

まもなく退位をお迎えになる平成天皇、そして、皇位を継承され次の時代を担う新天皇の

おふたりに贈るお祝いも込められているといいます。




「祝福の氣」が込められた時空間で、

聴衆者それぞれも祝氣の恩恵を受け取る。


宇宙遊泳はこんな感覚なのだろうか...

無重力中かはたまた水上に浮かんでいるように、

五感はひたすら心地よさに満たされる。




舞人が舞台を去り、そして、楽人が舞台から去り、雅楽の時間そのものが終わる。

残るのは気配、温もりと薄い重量感を持った清らかな気配でした。

はるか彼方の昔、雅楽の持つ歴史の中では戦国時代の武将達にも

”調え”の力あるこの音や舞は、心の薬となっていたのでしょうか。




触れるには入り口は狭く特別な芸能に見える雅楽ですものの、

「黒田節」の原曲は雅楽の中で最もポピュラーである『越天楽(えてんらく)』、

また、縁の深い大相撲では、行事は楽人、千秋楽は舞楽の舞の名前、

櫓太鼓は鞨鼓(かっこ)の音と

現代人でも馴染みある形で私たちの目に耳に触れることができています。




ともすれば美というものを忘れ、姿も心もかき乱して働き、

時間や他人が作り出した価値を追いかけ過ぎる現代人にこそ必要な芸能かもしれないな...。

余韻に浸りながら帰る道すがらに浮かんだ心のつぶやきです。


雅楽に限らず、ひとつの国に脈々と受け継がれている芸能には、

そこで生まれ育った現代人が、現代の個々人が忘却しがちである

活きるための源泉の力に帰還させてくれるエネルギーを持つものなのかもしれません。




ひょんなことから頂戴した伝統という古きを訪ねる有難き時間。

冬眠しがちだった私の心と目の次の扉を開いてくれた

春とおからじ...春までカウントダウン午後にて。








*東京楽所:
 1977年宮内庁式部職楽部のメンバーを主体に創設され、
 芸術音楽としての高い芸術性を備える国内最大の雅楽団体。
 78年以来、国内の数多くの雅楽公演に参加、高い評価を得る。

mak5 at 13:29|PermalinkComments(0)