つれづれなるままに・・・meteorologist, announcer, narrator, writer : miura mayumi Officical blog.

レビュー

November 09, 2014

間 (ま)

  まだ言葉というものを持たなかった時代は

  こんな感じで気持ちを通わせていたのかも・・・

  

  『The band''s visit〜迷子の警察音楽隊』

  少し前に雑誌でみかけ気になっていた映画です。
  
  国際映画祭のwowwow収録イベントで偶然
  その日の紹介作品の一つになっていたことを
  きっかけに思い出した2007年公開のイスラエル映画。

  イスラエルに招かれたエジプト・アレクサンドリア警察音楽隊ですが
  手違いからか迎えが来ない。自力で移動を試みたバスが着いた先は
  目的地とは一字違いの街ベイト・ティクバでした。

  砂漠の中にある街で過ごす一昼夜に起きる出来事の中で
  警察隊8人と街の”普通の人々”との微細な心模様が
  さびれた街の空気とともに淡々と語られていきます。


  エジプトとイスラエル。もともとは敵対する国同士ですが
  共通言語である英語を介して交わされる会話は
  おなじ人同士、人の男と女間の思いのやりとりです。


  ゆるやかな速度で丁寧な英語で育まれる会話は
  少したどたどしいがゆえに耳にも伝わる体温が温かい。

  そして

  ”間”あい....

  言葉以上に”饒舌”です。


  魅力的な男達女達それぞれ
  登場人物達の感情の微妙な動きは
  随所に差し込まれた「間」に確かに投影されています。

  沈黙の中に
  言葉を発するまでの間の時間に
  目線に、表情筋の動きに
  昼夜の影の動きに・・・


  日本映画の語りは
  ”間”にありと言われますが
  このイスラエル作品の語りも
  ”間”にあり、でしょう。

  四季あるしっとり感ある空気の中で生まれる間合いと
  乾季のみの砂漠の乾いた空気の中で生まれる間合いの違いはあれど。


  日常の些細なことから人生レベルに至るまで
  静かに展開する物語を通して語られる
  音としての言葉、間が作る言葉の語りを通して
  絶え間なくこちらの感情をくすぐってきます。


  饒舌なるまでに言葉を尽くしがちである。
  仕事柄を抜きにしても
  大都会で暮らしていると
  言葉で何もかもを伝えることに頑張ってしまうことが多いな・・・
  この作品を観ているとひとつ
  そんなことにも気づかされます。


  人がまだ言葉と言うものを持たなかった時代は
  インスピレーションで対話していたとも言われています。

  「間」合い。
  あふれる言葉を駆使するいまの時代にあっても
  その音の無い言葉が持つ伝える力の強さも
  感じられる作品。


  物語の静かな進行とともに
  自身との静かな対話も持てることでしょう。

  無駄の無い無音と生活音と音楽
  そして有音無音の言葉だけがある砂漠。

  都会も静まる冬に向かう
  これからの季節にもおすすめの映画です。
  

*『迷子の警察音楽隊』:
  第20回東京国際映画祭東京サクラグランプリ(最優秀作品賞)、
  第20回ヨーロッパ映画賞主演男優賞、ディスカバリー賞受賞。
  第60回カンヌ国際映画祭ある視点部門出品作品。


 
  


mak5 at 17:44|PermalinkComments(0)TrackBack(0)