レジリ学園関西校
December 19, 2019
記憶に残る・残す.. Mix Leap Joint #32 防災研究座談会
その一言が、あなたの
「記憶に残ること。」
情報を
伝える者としての、翻訳者としての
わたしの心得の一つである。
あれから2週間という時間が経ちました。
師走が始まったばかりの12月5日、
『Mix Leap Joint #32 サイエンスカフェ- 防災研究座談会』にて
気象予報士・気象防災アドバイザーの一人としてお話をして参りました。
防災にいろいろあれど、本日のお題は....もちろん『気象防災』。
今回は、ヤフー大阪xレジリ学園関西校x大阪市立大学都市防災教育研究センターの
共催で開催されたイベントであり、
防災教育・研究の最新技術やプロジェクトの情報の共有と連携の促進が目的です。
Mixという名称の通り、産学官・業種業界の垣根なし、
その時々のテーマの分野に関わる関わらないの垣根もなし、
個々人の興味と関心を基にして集まった人々の多様な立場と視点にも垣根を作らない。
自由な空気にあふれる場に集合したのは、満員の100名を超える方々でした。
中には、日頃お世話になっている気象台(大阪管区)という予報士にとっては本丸からの
ご参加もありで、少しばかり緊張(わが緊張・5段階レベルに例えれば、約4.2)が伴います。
摩天楼の窓外に街の灯りがきらめく頃、定刻通りに開始。
司会を務めるヤフー大阪・Mix Leap企画運営の中川さんの軽やかなトークで幕が開けました。
今回で32回目というMix Leap Jointの趣旨説明のあと、
まずはサイエンスカフェを主催するCERD・大阪市立大学都市防災教育研究センターから
重松教授による”そこに人ありきの防災の社会実装を軸にした研究/技術開発や活動”の紹介です。
そして、レジリ学園関西校の世話人・小島さんからは
災害に強い・しなやか・明るい希望をキーワードにして、日本社会の課題解決を目的とした
コミュニティが共創し活動する市民レベルで運営されている活動が紹介されました。
密度の高さを感じる活動から伝わるのは、いずれも現実に寄り添ったものであり、
「個々人の防災」、「おいてけぼりのない防災」を目指していること。その地道さと確かさに
ひっそり感動しながら、出番待ちで緊張しこわばった我が心も少し緩んだような...。
さて、ここからはいよいよ本日の2大講話の時間に入ります。スピーカーを務めるのは、
Yahoo!天気・災害 デザイナー/防災士の小野さん、そして、わたくし気象予報士・三浦です。
まずはお先に失礼、わが講和の題目は『気象情報の伝え方・受け取り方・使い方 』。
気象情報の翻訳者(予報者)、かつ、送り手(解説者/キャスター)からの視点で語り、
異常時(災害時)のみならず通常時にも、得た情報を個々人で生かしてもらうことを狙って
30分ほど(実は10分超過で40分ほど...ですが、想定内の時間超過...)時間を頂戴しました。
数多ある情報の種類、各情報の特性とそこに込める意図の相違とその受け取り方、
特に、異常時には送る側と受け取る側の意識の距離を近づけるための知識の共有が
重要であることをポイントに、実演を交えながら語ります。
なんとなく無意識に受け取っているような気象情報を、
”さて、あなたは実はどのように受け留めているのか・生かしているのか?”
講和のメインとして組み込んだオンエア実演を通して、全ての参加者に問うてみます。
同じ情報でも、「web(文字)・ラジオ・TV」とそれぞれの媒体によって
意識に届く感覚や度合いの違いを感じ取ってみること、
各媒体が持つ役割の違いを再確認してみること。
有るようで無かった一つの情報認識の実験を試みました。
続いて、小野さんからの話題は
『3,000万ユーザーに情報を届けるYahoo!天気・災害の防災の取り組み」』です。
3000万人の内のひとりとしても楽しみだったエピソードも含めた話の数々は、
目から鱗が落ちるあり、激しく同意ありの濃い30分(小野さん、しっかりタイムキープ...)。
ユーザーファーストを基本にした日々のサービスの中で、全国からアクセスが激増する
異常時(災害時)こそ、その精神が全社的に総動員され、順調な情報提供がなされていること。
現実的な最小公倍数の受信者のグループをいくつも想定し、
ユーザー個々人の状況や目線に極力合わせた多様な仕組みが、
気づかぬところで組み入れられていること等、
この場で初めて知ることも含めた、舞台裏の絶え間ない努力も語られます。
情報の橋渡し役である”ひと”、または、”電子”。
両者の伝え方と表現形式に違いはあっても、伝える側として
受け取る側に対して最大限の想像力を働かせ配慮し、その上で伝える試行錯誤は同じ。
”あなたの意識の奥に届くよう、記憶に残るよう、最終的に行動へと結びつくよう”
その時々に尽力しているいくつもの共通点には深く頷かずにはいられません。
この共通項を一目と一読で理解できる架け橋の役目を担ったのは、
コミュニケーションの可視化と言われるグラフィックレコーディング(通称グラレコ)。
話すそばから内容を理解し図化・文字化するイラストレーター・吉田さんの
高度な理解力と迅速さにも、ただただ感心するばかりです。
正直、時折数ミリ左右に迷走したであろう私の話も見事にまとめあげて下さいました。
さらに、続くのは、もう一つの個人的な楽しみでもあったワークショップの時間です。
2つの講和で語られたポイントも見事に織り込まれたワークが
CERD・生田先生のリードで進みます。
ワークのまとめとなる各チームの発表には、さすが大阪と思わせる感性、
”ユーモアとウィット”がさりげなく自然に随所に練りこまれています。
(ステレオタプでごめんなさい。大阪でのスピーチはまずは笑いを取るべし!
...とアドバイスされての見参でしたゆえ。
と、打ち上げで話したところ皆様から笑いが取れました ほっ)
愉快なトークに和ませてもらう一方で、きりりと気を引き締められたのは
「情報を受け取る側の目線や意識は百人百様」、
送り手はそれを無視することなく手を抜くことなく伝えるということ。
翻訳者、伝達者としての心構えを整えてもらったような締めくくりのコーナーでした。
座談会の終盤、本日のオーラスともいえる懇親会では、
矜持をさらに開いての議論の花が咲きます。
単純・簡単な疑問から学術研究の難易度高いものに至るまで、1対1での質疑応答は
どれも気象業従事者としての視野を広げてくれる内容であり、
回答しきれずのものは今後の宿題として残っています。
情報の波という大波にもまれ、忙しなく日々が流れる現代においては、
大事なことほど人は忘れるのがますます上手になっているような気がします。
あれから2週間。
参加のみなさまの記憶には、この日の話題のいくつが記憶に残っているのでしょうか。
あのひと言が、あなたの「記憶に残る」こと。
その情報が日常的にあなたの行動に生きること。
この日、私からみなさまに受け取って頂きたかったお土産といえば
あの実験で一人一人があの場で感じ取ったこと、欲を言えば、伝えたかったポイントです。
ふとした瞬間にでもそれが思い出され、ひいては
心と体を動かすきっかけになれていれば幸いです。
防災は日常にあり。。。。
以上、わたくしからのリポートでした。
*CERDリポートはこちらへどうぞ↓↓↓
『第24回 サイエンスカフェ
(防災研究座談会)を
開催しました』
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心は満たされたものの、空腹を抱えたままに去る、天空で語る宵...でした。
次々と話し込み過ぎてヤフー大阪さんのおもてなしにあやかれなかったのは
心残りといえば心残り です。
(...この思いを解消できるのは”再会(再登壇)の時”だな。失礼しました...)
mak5 at 23:30|Permalink│Comments(0)│